信義誠実の原則とは、信義則ともいい、権利義務という法律関係の履行については、当事者相互の信頼と誠実な行動によって円滑に行われるべきであるとする法原理をいいます。
民法では、「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。」と規定しています。
民法の規定では、権利の行使と義務の履行の2つが掲げられていますが、契約の解釈においても信義誠実の原則が働きます。
信義誠実の原則は、民法の全体を支配する法原理であるだけでなく、民法の領域を超えた領域でも援用されています。
このように、信義誠実の原則は、法律と道徳の調和を図るための重要な概念とされ、私法関係の全体を支配する法原理と位置付けられています。
信義誠実の原則と並んで、権利濫用の禁止も広く援用されている法原理です。
民法では、「権利の濫用は、これを許さない。」と規定しています。
権利の濫用とは、外形的には正当な権利行使とみえるが、その具体的な状況と結果とを鑑みると、その権利本来の内容を逸脱するために、実質的に権利行使として認められない行為をいいます。
権利の濫用かどうかの判断は、権利を行使する者とそれを受ける者との関係や、社会的な影響等を考慮してなされます。
信義誠実の原則と権利濫用の禁止は、適用領域が明確に区別されているわけではなく、この2つの法原理が重ねて援用されることも少なくありません。