旧商法では、債権者保護のために、株式会社では1000万円、有限会社で300万円という最低資本金制度を採用していました。
しかし、従来から、債権者保護のためには最低資本金よりも、①会社の財産の額が適切に開示されていること、②実際にも会社に適切な財産が留保されていることの方が重要であるといわれてきました。
そこで、会社法は、株式会社の設立を容易にするために最低資本金制度を廃止し、債権者保護については、財産状況の適切な開示制度や決算広告の義務付けなどの措置を講じています。
ところで、最低資本金制度の廃止に伴い、資本金が1円という株式会社が多数登場してくると思われますが、そのことを中小企業の債権者(銀行などの金融機関や取引先)の立場から考えると、今後はこれまで以上に債権回収リスク(与信リスク)に注意することが必要になります。
例えば、債権者が「財産状況の適切な開示制度」を利用して、投資先の財務状況などについて計算書類などを通じて正確に把握し、債権回収リスクが高いと判断した場合には、実効性のある担保(抵当権、連帯保証など)を取るとか、取引先(債務者)の財務状況に適切に対応して、取引の縮小や停止などを行うといった債権管理が一層必要になると思われます。